外国人の定住にかかわる諸問題

田尻英三他著『外国人の定住と日本語教育[増補版]』ひつじ書房
外国人の定住と日本語教育

この本は、2003年に日本語教育学会春季大会で行われたシンポジウムが元になっている(予稿集を見たら、私も聞きに行っていた)。2007年の増補版は、2004年に出版されたものにブックガイドが追加され、第5章が加筆修正されているが、それ以外は前の版のままなので、2013年現在に読むと、やや古く感じられるデータも残っている。
第1章はこの問題に関するブックガイドに徹しており、本の構成としては珍しく感じた。
第2章は、在日コリアンについてコンパクトにまとめられており、最低限の知識を得るのによく、いろいろな人に読んでもらいたい章だと思う。また、日本語教育という観点からはなかなか指摘されない、日本語学校の問題点について触れている。
第3章の著者は弁護士で、少数者(マイノリティ)とは何かを初めに書いている点が興味深かった。外国人の定住は、少数者の問題と重複することが多いので、この本の冒頭で述べられていてもおかしくない内容である。
第4章の著者は開発教育の専門家で、多文化共生を我々全体の課題として書き、どのような社会を目指す教育をすべきかを述べている。
第5章は、ニューカマーの子どもに焦点を当てた話で、事例と問題点の指摘が多い。もともと社会的に不備が多いので、それ以上のことを書くのはなかなか難しいように思う。

「外国人」の問題は、少数者(マイノリティ)の問題と切り離せないことから、様々な観点を持つことができる。個人的には、第2章・第3章のように、法整備の観点から見るほうが問題が見えやすく、よりよくするための手がかりもつかみやすいような気がしている。また、第4章のように、自分を含めた全体のこととしてうまく言えるようになりたいと思った。